第1回協会設立大会
日時:1992年9月19日・20日
会場:東京福祉専門学校(東京西葛西)
大会会長:平田豪成(東京福祉専門学校)
プログラム
9月19日(土)
1.岩下徹(山海塾ダンサー)、橋本光代(湖南病院看護部長)
「少しずつ自由になるために」(実技と解説)
2.倉知幸代(東海ホリスティック医学振興会)
「太陽の下のヘルシー・フラメンコ」(口頭発表)
3.崎山ゆかり(奈良県健康づくりセンター)、平井タカネ(奈良女子大学教授)
「ダンス・セラピーにおける評価・診断について」(口頭発表)
4.町田章一(元 聖カタリナ女子大学助教授)
「ダンス・セラピーの現状と課題」(パネル・ディスカッション)
5.社領明(ボディー・トーク協会会長)
「ボディー・トーク」(実技)
懇親会
9月20日(日)
6.池見酉次郎(日本心身医学協会理事長)、城石明喜子(福岡女子短期大学助教授)
「ヘルス・アートとしてのダンス」(講演と実技)基調講演
7.芙二三枝子(芙二三枝子舞踊研究所所長)
「感覚を目覚めさせるトレーニング」(実技)
8.フランシスコ・カストロ(上智大学コミュニティ・カレッジ講師)
「Personal Development through Dance & Music」(実技)
9.梅田忠之(梅田診療所所長)、佐伯敏子(日本アメリカンダンス協会会長)
「アメリカン・ダンス」(講演と実技)
総会
総会議事録
司会 平田豪成より挨拶。議長、副議長、書記の選出。設立準備委員会より議長を町田章一に、副議長を星野仁に、書記を松原豊にお願いしたい。
拍手多数にて承認。
議長、副議長より挨拶。
議題1 日本ダンス・セラピー協会(仮称)設立経過と設立について
最近、日本のいろいろな所で実際にダンス・セラピーを実施されている方が増え、横のつながりが欲しいとの声が上がり、設立準備検討会が開かれた。
1992年2月10日に第1回設立準備委員会が開かれ、以後準備委員会、事務局会議が重ねられた。本日ここに協会の設立を提案する。
議決 拍手多数にて承認。
議題2 日本ダンス・セラピー協会会則について
会則案(別紙参照)読み上げ
質疑 特に質問なし。
議決 拍手多数にて承認。
議題3 日本ダンス・セラピー協会役員について
(1)理事の選出 立候補者なし。準備委員会よりの推薦者提示。
理事 岩下徹、梅田忠之、神山五郎、平田豪成、芙二三枝子、星野仁、町田章一、松原豊
議決 拍手多数にて承認。
(2)会長、副会長の選出 総会を一時休会し、理事会を招集して会長、副会長の推薦者を選出する。
総会議事を再開し、推薦者を発表する。
会長 梅田忠之
副会長 岩下徹、芙二三枝子
議決 拍手多数にて承認。
(3)役員の任期について 規約では2年任期であるが、今回に限り次回総会までの任期としたい。これは理事の総意である。
議決 拍手多数にて承認。
(4)顧問について 池見酉次郎とシャロン・チェクリンにお願いしたい。
議決 拍手多数にて承認。
(5)事務局本部は東京福祉専門学校内に置き、町田章一を事務局担当理事とする。
議決 拍手多数にて承認。
(6)監事について 立候補なし。準備委員会より推薦者提示。
監事 平井タカネ、鹿島由起
議決 拍手多数にて承認。
(7)評議員について 創立会員の中から、役員を除いた全員を評議員として推薦したい。
議決 拍手多数にて承認。
議題4,5 今年度予算及び事業計画について
平田理事より予算案、事業案はまとめて討議し、入会者が出揃ってから詳細な案を検討してはどうかとの提案がなされ、了承。予算(案)、活動計画(案)の説明がされた。
議決 拍手多数にて承認。
議題6 その他
平田理事:日本ダンス・セラピー協会は現在のところ会員同士の交流の場であるが、今後は頻繁にセッションを開いて世に知らせていくことが必要である。
芙二副会長:会員獲得、普及のための大きなイベントを開いてはどうか。来年の総会に向けて、ネームバリューのあるようなイベントを開きたいと思う。何か案があれば事務局、理事に知らせていただきたい。
平井監事:日本ダンス・セラピー協会の名称で、ダンスの後の中黒(・)を付ける必要があるのか。
町田理事:英語ではDance Therapyと中があいているので中黒をつけたほうがよいと思う。
社領会員:あまり早急に決めてしまうのではなく、次回総会までの宿題としてはどうか。
議長:中黒については次回総会で討議決定する。
議決 拍手多数にて承認。
議長より設立総会閉会が宣言され閉会。
(敬称略)
1992年9月19日(土)(書記 松原豊)
日本ダンス・セラピー協会会則
第一章 総則
第1条〔名称〕 この会は、「日本ダンス・セラピー協会」と称し、その英訳名を"Japan Dance Therapy Association (略称JADTAジャッタ)"とする。
第2条〔目的〕 この会は、ダンス・セラピーに関する研究、実践を促進し、会員相互の情報交換と技術交換を図り、ダンス・セラピーの普及を図ることを目的とする。
第3条〔事業〕 この会は、前条の目的を達成するため、次の事業を行う。
(1) 総会、及び、研究会の開催
(2) その他、この会の目的に必要な事業
第二章 会員
第4条〔会員〕 この会は、正会員、学生会員、及び、賛助会員をもって組織する。各会員は、この会の目的に賛同し、理事会の承認を得た者とする。
第5条〔会費〕 会員は、別に定めるところにより、入会金及び会費を納めなければならない。→ 入会金及び会費規定
第三章 役員
第6条〔役員〕 この会に、次の役員を置く。
(1) 会長 1名
(2) 副会長 2名
(3) 理事 若干名(但し、1名を事務局担当理事とする)
(4) 監事 2名
(5) 評議員 若干名
第7条〔役員選出〕 理事、監事、評議員は、総会において会員の中から互選する。会長、副会長は、理事の中から互選し、総会において会員の承認を得る。
第8条〔役員任務〕 この会の役員の任務は、次の通りである。
(1) 会長は、この会を代表し、会務を掌握する。
(2) 副会長は、会長を補佐し、会長の欠ける時はこれを代理する。また、会長の委任に基づき、会務を処理する。
(3) 理事は、この会の運営を審議し、処理する。
(4) 監事は、会計を監査する。
(5) 評議員は、各々の地域、分野において活動の中心となる。
第9条〔役員任期〕 この会の役員の任期は2年とする。但し、再任を妨げない。
第10条〔顧問〕 この会に、顧問若干名を置く。
2 顧問は、理事会の同意を得て、会長が委嘱する。
3 顧問は、会長の諮問に対して意見を述べ、また、会議に出席して意見を述べる。
第四章 会議
第11条〔総会〕 総会は、会員をもって構成し、会長が年に1回招集する。
2 総会においては、次の事項を決議する。
(1) 事業計画及び収支予算
(2) 事業報告及び収支決算
(3) 役員改選及び会則改正
(4) その他、必要な事項
第12条〔理事会〕 理事会は、理事をもって構成し、会長が必要と認めた時に招集する。
2 理事会においては、次の事項を決議する。
(1) 会務の執行に関する事項
(2) 総会に提出する議案
(3) その他、必要な事項
第五章 細則
第13条 この会の経費は会費その他の収入をもって当てる。
2 この会の会計年度は、年次総会開催翌日より、翌年の年次総会開催当日までとする。
付則1 この会則は、平成4年9月19日より施行する。
付則2 協会本部、事務局は、次の所に置く。
〒134 東京都江戸川区清新町 2-7-20
東京福祉専門学校内
日本ダンス・セラピー協会
TEL 03-3804-1515 FAX 03-3877-1177
―――――――――――――
入会金および会費規定は次の通りです。
入会金 年会費
正会員 1,000円 5,000円
学生会員 1,000円 3,000円
賛助会員 無料 50,000円(1口)
設立大会会計報告
収入の部
項目 金額 摘要
大会参加費 329,000 47名×7,000
懇親会費 90,000 30名×3,000
弁当売上金 9,100 13名×700
計 428,100
支出の部
項目 金額 摘要
事務用品費 13,142 名札、シール、領収証等
消耗品費 25,741 ビデオテープ、紙看板、
録音テープ、フィルム等
福利費 8,655 砂糖代、事務局慰労会代
買掛金 138,551 弁当、親睦会飲食代
外注加工費 3,017 現像代
通信費 7,200 大会案内発送費
損金 3,500 本代へ
計 199,806
差引総合計 228,294
(会計 吉田恵美子)
役員あいさつ
梅田忠之会長
平成4年(1992年)は、日本ダンス・セラピー協会発足の記念すべき年になりました。
9月19日、20日に設立大会が、東京都江戸川区の東京福祉専門学校で開かれました。
両日にわたり、我が国で行われている幾つかの技法が紹介され、参加者はみずからの身体で体験する機会をもちました。
ダンスセラピーは医学の一部門、医療の一方法としての役割を確立すべく、歩みはじめています。
各種のダンスの適応を探り、その効果の研究を発表する場をもつことが求められるでしょう。
また各地方に支部をおいての活動が計画されております。そこではダンス専門家、関心をもつ医療関係者に加えて、一般の市民も相集い、技法の公開、情報の交換、相互の交流などを行い、さらに、認識が拡がるよう各方面への対外活動が開始されることになるでしょう。
具体的に、病気への効果が明らかにされることは、ダンスが病気の予防にも健康増進にも役立つことを意味します。
「楽しさ」は健康につながり、逆に不快感などの感情の嵐は身体を損うことは研究で立証されつつあります。
ダンスが楽しさ、心地良さを伴うものであることが体験されれば沢山の人の心をとらえるようになるに違いありません。
治療効果の判定には通常、諸検査によるデータが要求されます。これについて、ある著名な研究者から次のアドバイスをいただきました。
――病気によっては丁寧な「聞き取り」「問診」によって確かめていくことの方が大切で、むしろ理にかなっていることであり、真実をつかむことができるものである。
また、発表するに際しては、効果がプラスのケースとともに効果マイナスのケースについても明らかにしておくことが必要である。これはセラピーの進歩のためであり、また新しいセラピーとして信頼をかちとり、これを世に推進していく上に大切である――
設立大会で基調講演をされた池見酉次郎先生は、医学に心理学をとり入れた「心身医学」を我が国に確立された方です。従来の医療をさらに充実させるべく、新
しい心理学的治療法や身体技法を次々と欧米・東洋から導入し、またみずからも開発してこられました。その恩恵は医界はもとより教育会、産業界などにも及び
ます。さらに研修会や著書、マスコミを通じて、心から体へ、体から心へ、の心身相関の考え方は全国民に理解されるようになり、病気に対してのみでなく人生
の知恵、処世法としても活用されつつあります。
今後、顧問として日本ダンス・セラピー協会を支援し助言して頂けることは、大へん心強く思います。
豊かな時代に入っておりますが、その反面心のふれ合いの不足をはじめとするいろいろのストレスや、運動の不足によっておこる病気が著しく増加しております。
ダンスは身体運動の立場からみて身体諸機能を活性化するとともに、抑圧された感情の発散を促します。集団によるスキンシップの効果についてはいうまでもありません。
ダンスの持つ美の表現という芸術としての一面は、今まですばらしい先輩たちによって論ぜられ演じられてきました。これによって演じる人、観る人の心にうるおいをあたえてきたことははかり知れないものがあります。
設立大会の日、ダンスを研鑽する皆さんに接していて常に優しく、常に動きが美しく、さすがセラピスト、アーティストと感銘しました。
近い将来皆様の活動の分野がますますひろがることを期待しております。
時にはオーバーワークにおちいりがちな仕事でもあり、何よりもご自身の健康に留意されるよう願っております。
最後になりましたが、協会の誕生に力をつくしてこられた町田章一先生はじめ、今までダンスセラピー活動を続けられ、今日の日につなげられました諸先生に厚く敬意を表します。
大会当日、心温まる行き届いた運営をしてくださった皆さん有難うございました。
これから力を合わせて困難を一つ一つ克服し道を拓いてまいりましょう。
芙二三枝子副会長
かねて望まれていた日本ダンス・セラピー協会の設立総会が、協会入会者89名を得て、開催され発足した。
ここに至るまでには、多くの方々の協力と御支援があったわけだが、中でもこれまで数年間にわたって、日本各地ならびに海外に足を運び、ダンスセラピーの実
状と、関係する方々の意志を調整してくださった、町田章一先生のご努力に対して、改めて敬意と感謝の心を強めると共に、総会会場として建物の全体を開放
し、準備から終了までの全日程を支えて、協会設立の誕生を導いてくださった、東京福祉専門学校事務局長、平田豪成先生ならびに、職員の先生方に対して、言
葉に言い表わせない感動と感謝の心を深めている。
9月19・20日の両日に公開されたレクチュアとワークショップと、パネル討議は、ダンスセラピーの多面的な方法と活動を、具体的に提示し合うものであったから、各々の質を連続して体験でき、予想以上の収穫があった。
そもそも協会設立の要望の一つに、国の内外のダンスセラピー活動を知り合う、ネットワークを持つことであったから、この二日間に早速その一端が実現したわ
けで、多忙な日程の、貴重な時間をさいて下さった講師の先生方の誠意と、受講し合う会員の熱意が、そのまま協会のエネルギーであり、財産だと思った。
基調講演後、すぐ沖縄に飛び立たれた池見酉次郎博士の講演「ヘルス・アートとしてのダンス・セラピー」は、もっと時間をかけてお聞きしたい内容で、ダンス
と医学が手をつないで、人間回復の活力を生むダンスセラピーを、ますます力あるものとし、日本の社会にそのパワーを開放することが、まさに時代の要求だと
痛感させられた。
それにつけても、社会の各所でたやすく、ダンスセラピーを受けられるようにするために、指導者の育成と場の拡大が求められるが、協会によって情報交換が密になり、未来への展望が開かれることを切に期待する。
さて、長年現代舞踊の世界に生き、舞踊団を主宰し、アートとして舞踊創作と、後進の指導を主な仕事としてきた私は、踊る心身を育てる、いの一の基礎訓練を
求めて編集した「感覚をめざめさせるトレーニング」の研究実践によって、ダンスセラピーとの絆が生まれた。現在東京福祉専門学校の一年生全員の必須課目と
して、そのトレーニングが採用されているが、この発端も町田・平田両先生の、先見の明の賜で、同校の講師としてダンスセラピーを指導している舞踊団員は、
ダンサーであると同時に、若者達の感性の扉を開くダンスセラピーの授業に、誇りと生きがいと合わせて、経済的基盤も備えて頂いている。
この発展は私にとって何よりの喜びで、アートと、ダンスセラピーの諸問題の発想が、一つの根拠から吸出できるわけで、私を囲む環境の中で、自然にこうなったことに、改めて深く感謝している。
協会発足にあたり、高い役職を頂いたが、果して組織の運営にどれだけのことが出来るか心もとない。しかし人生で最大の力を発揮できる時代に生きる、平田・
町田の両先生をはじめとする理事の方々の結束を力と頼み、会員諸氏のやる気の気を得て、梅田・岩下両役員と心を合わせ、あせらず、構えず、祈りつつ、協会
と共に歩きたいと願っている。
岩下徹副会長
御無沙汰致しております。お元気でいらっしゃいますか。先日のJADTA設立総会、本当にお疲れ様でした。私もこの協会設立の呼び掛け人のひとりであった
にも拘らず、結局何ひとつお手伝いすることが出来ず実に心苦しい限りです。その上成り行きとは言え事もあろうに副会長などと言う身に余る大役まで頂いてし
まうなんて、図々しいにも程があろうと言うものでしょう。
さて、このようなお互いの情報交換の場が持たれたことは喜ばしいことだと思います。私が関わって
いる滋賀県野洲郡中主町の湖南病院に於ける「舞踊療法の試み」が定期化されてもう三年目になりますが、その間可成りの紆余曲折を経てやっとこの頃湖南病院
なりのやり方がみえて来たように思われます。初めは随分失敗もありました。患者さんに良かれと思ってやっていた筈がその全く逆の結果を招いてしまったこと
もあります。
平井タカネさん達が訳されたシュープ女史の『からだの声を聞いてごらん』を読むと、アメリカのダンス・セラピーの草分けのひとりである彼女の
生みの苦しみの様子が生々しく伝わって来ますが、現在日本でダンス・セラピーなるものに多少とも係わりを持ってしまった私達も、多かれ少なかれ彼女と似た
ような状況に置かれている訳です。ですからこれから先何度も試行錯誤を繰り返さねばならないでしょう。
しかし先ずその前に「ダンス・セラピー」を巡る討議
が徹底的に為されなければなりません。果たして我が国に於いてダンス・セラピーとは何であり、また何であるべきなのでしょうか。それは所謂芸術としてのダ
ンス、単に娯楽としてのそれや、健康の為の体操としてのそれとは異なる、飽くまでセラピーとしてのダンスでなければなりません。この国では一体どのような
ダンスがセラピーとして有効なのでしょうか。そもそもセラピーとはどう言うものなのでしょう。このような素朴な疑問は絶えず湧いて来ます。これ等の単純で
あるからこそ本質的な問いに対して多少とも説得力を持つ答えは、セラピーが目的として実際に試みられている場、つまり現場でこそ得られるものには違いない
でしょうが、それ等をこの場に持ち寄り互いに検討し合うことは出来る筈です。
しかしそのようにしてやっとのことで見つけたものであっても、すぐに色褪せて
しまうことは覚悟せねばならないでしょう。それは私達がいつも患者さんと言う生身の人間を相手にしていること、常に彼等と触れ合っていることを前提にして
いるからだと思います。人は絶えず変わり、状況は刻々と変化するものです。このことを無視してセラピーを考えることは出来ません。ですからいつもわからな
いことだらけなのです。わからないから続けているのかも知れません。本当に人間ほどわからないものはないでしょう。やればやる程わからなくなってしまいま
す。「生まれたことが即興である。」ならば、生きて行こうとすることはもっと開き直って常に即興であろうとすることなのかも知れません。即興を生きようと
することは自ら進んで一寸先の闇に身を投じようとすることだと思います。その意味で人生は何度ご破算になっても構わないのです。またその都度やり直せば良
いのですから。
最近湖南病院の附属施設「湖南クリニック」で小人数の外来の患者さんを相手にデイ・ケアとしてのダンス・セラピーの試みが始まりましたが、
其処にのびのびと楽しげな「ぼつぼつでよいがな」と言う書が飾ってあります。今にして想えば私もそんな気持で再出発したのです。そして私のダンスも生き直
しの為のそれとして始まった訳ですが、それは結果的に私自身へのセラピーでもあったように想います。確かにそれによって私は少しずつ自由になり、生きてい
ることが少しだけ楽になって、人生を少しは楽しめるようになったのです。ですからそれは他者への癒しを目的としたものではありませんでした。私はただ私自
身が生きて行く為にダンスを必要としただけであり、ダンスによって誰れかに何かをしたかった訳ではなかったのです。他人より先にこの私がダンスによって助
けられたのだと思います。さもなくば今の私は恐らくいなかったでしょう。それどころかひょっとすると患者さん達と同じようになっていたかも知れません。だ
から他人事とは思えないのです。
或る舞踏家が、「少しずつ狂って行くなら、病院に行かなくても済むだろう。」と何かに書いていましたが、彼にとって「舞
踏」が「少しずつ狂って行く」ことなら、私にとってのそれは「少しずつ自由になって行くこと」です。「舞踏」とは自らがそのオリジンとなり得るようなダン
スであり、決して様式スタイルとしてのそれを云うのではありません。このような意味に於いてのみ私のダンスは「舞踏」と呼ばれても良いと思います。しかし
今のところこのようなダンスが真にセラピーとして成立するのかどうか殆ど何もわかっていません。いずれにせよ全てはこれからです。今後とも宜しくお願い致
します。パリもマロニエの葉が散り始めています。これから山海塾のツアーでスウェーデンに行く予定です。どうか時節がら御自愛の程を。
十一月五日パリ、モンマルトルにて
池見酉次郎顧問
ダンス・セラピーは、1983年に、M.
チェイス(米)によって創始され、言語的な交流の出来ない精神病者達に対して、肌のふれあい、体の動きやリズムを通して感情移入関係を作り、人間どうしと
しての相互作用が出来るように援助するもので、精神病、精薄、老人などへの適用が主体であった。1979年頃から、L. エスナベックは、A.
ローウェンの生体エネルギー療法をダンス・セラピーに取り入れて、その拡大を計った。A.
ローウェンは、「病的な人では、情動と体への気づきと表現が、幼児から抑圧されている」という考えのもとに、積極的な体の動き、呼吸の調整などによって、
情動の表現や体への気づきを促す本療法を開発した。
わが国では、1980年に、町田章一、高橋宮子によるダンス・セラピー研究会が開かれ、1984年には、S.
チェクリンのダンス療法講習会が開かれ、1989年には、東京芙二ダンス・セラピー研究会が創立された。さらに、本年2月には、町田氏のご努力によって、
日本ダンス・セラピー協会設立検討会が開かれ、検討会を重ねた上で、本年9月19、20の両日に、日本ダンス・セラピー協会の発会式が行われるに至った。
このような米国式の精神障害者、知能遅滞者などを中心にした、精神医学的なダンス・セラピーの流れに対して、京都で開業中の梅田忠之(耳鼻科医)は、
1980年から広く「心身症一般の治療と中高年者健康法」というタイトルのもとに、ダンス講習会を開始している。その結果、従来の薬物と心理療法の統合に
よる心身医学的療法の効果を補うものとして、さらには、それらに代わるものとして、ダンス・セラピー(佐伯敏子氏の指導によるアメリカンダンスが中心)
が、数多くのいわゆる心身症に対して、心身両面でめざましく有効であることを、日本心身医学学会、その他でくり返し報告している。
1973年には、P. E.
シフネオス(米)が、「現代の心身症のルーツは、知性脳と情動脳との乖離かいり(失感情症)にある」と提唱した。その後間もなく、それよりも深いルーツ
は、知性と身体感覚との乖離(失体感症)、さらには、自らを生かしている大いなる自然への気づきの抑圧(失自然症)にあるという、私の考えを提案し、これ
が国際的に認められてきている。また、私は、かねて、このような脳の働きの乖離を矯めて、全人的な自己へのまろやかな気づきを促す、座禅、気功法、ヨーガ
などの東洋の身体文化(体を調え、心身を調える)の役割が、近年、内外で見直されている事実に注目している。
現代のハイテク文明のもとでは、幼児からの発達障害だけではなく、社会的なインパクトそのものが、現代の病のルーツとしての、失感情症、失体感症、失自然
症を招きつつあることが、心身医学の進歩によって明らかになってきている。そこで、私どものいわゆる「ヘルス・アート」の一つとして、万人に親しみやすい
ダンスに、東洋の身体文化のポイントを導入して、現代人の心身両面にわたる健康回復、さらには、現代の危機を乗り越える上で不可欠な、自然のいのちへの目
覚めを促すカギとしてのダンス・セラピーの展開に、力を尽くしたいと思っている。
シャロン・チェクリン顧問
To the members of the Japan Dance Therapy Association,
I offer my congratulations and best wishes on the formation of your new
professional association. It was over 25 years ago that the American
Dance Therapy Association had its first meeting with about the same
number of members. I remember it clearly as a time of excitement, hope
and promise.
There will be many roads to travel to create dance therapy in Japan and
there is much work to be done to become a profession. I offer my
support and best wishes that your journey will be one of continual
success.
Most sincerely,
(訳)
日本ダンスセラピー協会会員の皆様へ
新しい専門協会の設立を、心からお喜び申し上げます。25年前、アメリカ・ダンス・セラピー協会は皆様と同じくらいの会員数で、最初の大会を開きました。その時の感激と希望と確信を、今でもはっきりと覚えています。
日本でダンス・セラピーを創造していくには様々な道があることでしょう。また、専門性を確立するには多くのことを成し遂げねばなりません。皆様の活動が常に成功しますよう、私は心から支援させていただきます。
シャロン・チェクリン
会員紹介
●正会員・学生会員(敬称略) (89名)
芙二三枝子、梅田忠之、町田章一、平井タカネ、平田豪成、崎山ゆかり、倉知幸代、境田雅之、橋本光代、楢林理一郎、森実仁美、西川小百合、清水美和子、佐
藤美智世、鹿島由紀、斉藤葉子、松原豊、大沼幸子、飯田洋子、柴田文雄、葛西俊治、芳野香、照屋洋、星野仁、社領明、山崎則子、神山五郎、クロード・ロベ
ルジュ、佐伯敏子、戸田由美子、藤本美和子、山地弘起、藤原靖子、島根ちひろ、内田新二郎、荒川香代子、小林芳文、坂本徳俊、佐藤未菜、田中ふみ子、元吉
京子、岩下徹、畑中若恵、萩原美幸、堀切敍子、市川照代、森田珠世、城石明喜子、村井千枝、小山田有里、鹿島有子、小野久美子、小野寺毅、恒川洋、桑原か
よ、山岡有美、武井路子、平岡芳美、小口江美子、河辺初子、安田秀穂、大熊信、諏訪茂樹、朝武純子、百瀬留美、下村康、古達総一、白井幸久、佐藤紀子、有
泉智志、そり町浩、五十嵐淳、藤田明子、伊藤久美、大谷源一、安部律子、吉田恵美子、和田薫、池上貞男、小椋喜一郎、塩沢信之、畠中永典、新井秀樹、東原
貴行、大津夏生、豊島和江、東谷幸政、笹生良重、伊野順子
●賛助会員 (1名)
河田隆介(河田病院)
大会スタッフ
町田章一(大会責任者)、森田珠世(第一会場責任者)、平田豪成(第二会場責任者)、吉田恵美子・鹿島由紀(受付)、大沼幸子(販売)、元吉京子・佐藤未菜・鹿島有子・山崎則子(会場)、古達総一・影山敦(記録)、星野仁(懇親会司会)
参加報告
●JADTA設立大会に参加して
大沼幸子
この度、日本ダンスセラピー協会の大会に2日間参加して強く思ったのは、アメリカの技法に片寄らず、東洋的思想に根ざした素晴らしい方法が日本に存在して
いるということである。ダンスセラピーという名称はアメリカのダンスセラピーの影響を受けてのことと考えられるが、今後は禅が西洋に伝わったように、日本
のダンスセラピーがアメリカに逆輸入されるのではとすら思えた独自の方法が紹介された。(岩下徹、芙二三枝子、社領明)
東洋医学については池見酉次郎先生より、大変興味深い基調講演があり、ダンスの今後の方向性についても示唆をされ、心強く感じた。
今回、会長になられた梅田先生からも、西洋と東洋を統合させて、効果を得ているという発表があり、又、佐伯敏子氏の華麗なダンスにも魅せられ、至福の時を過ごすことができた。
また、実施しているものの間では、いつも問題になる評価について、アメリカの文献を訳されて紹介してくれた、崎山・平井先生の発表も大変興味深かった。ア
メリカのそのような評価が果して妥当かどうかはわからない。しかし、ダンスセラピーが説得力を持つには評価は避けられない問題であり、その糸口を開いてく
れたように思う。
全体的にこの2日間、盛り沢山でそれぞれが内容も濃く、もっと聞きたい内容であった。どれも時間が短く、どの講師も時間を気にしながら、内容は短縮しての
展開であった。欲を言えば、2日目の開始を早めて、1つ1つをもう少し時間をかけられたらと思った。1日目はともかく、2日目は9時にして昼にもう少し
ゆっくり交流ができれば良いと、思った。良かった点は、会場が分散されず、全員が全部に参加できたこと。当初、初日の午前は2会場に別れていたが、事情に
より、1つの会場になり、得をした気分になった。社領先生のワークショップは大うけで顔がゆがみっぱなしであった。
会場については、申し分なく、ダンスセラピー協会のために作られたかのような錯覚に陥った。またコーヒー、ウーロン茶もたっぷり頂き、ただただ感謝。
ますます充実した会になるよう小さな催しが、時々行われたらと思います。次回はさらに輪を広げ、また素晴らしい出会いがあることを期待しています。
●設立大会の印象 星野仁
まず岩下さんのセッション。社領先生とペアを組んで相手のからだを動かす「人形使い」、なかなか人のからだを動かすのは難しい。しかも先生動いてくれな
い。「もっと気持ち良く動かしてくんなきゃやだよ」とからだで言ってくる。逆に先生人を動かすのがうまい。思うままに自分のからだを動かされて、おもしろ
かったです。橋本さんの病院でのセッションの報告では、患者さんが嬉しそうに岩下さんを動かしていたスライドが印象的でした。
総会では副議長に選ばれましたが、なんとか無事に終わってやれやれ。
続いて倉知さんのフラメンコの発表と崎山さんの効果についての今までの文献のまとめ。スタッフなのでゆっくり聞けなくて残念。町田先生の今までの日本のダ
ンスセラピーの流れのまとめは、かかわってきた方たちの生の声が聞けたのがよかった。社領先生のセッションは時間の関係でその場でできることが中心で、あ
の口のうまさにはまいりました。あっと言う間の40分でした。
懇親会ではNYでアレキサンダーテクニックを学んでる芳野さんほかいろんな人と話ができて、多くの仲間とここで出会えたというのが一番嬉しかったです。
さて翌日ですが、池見先生のヘルス・アートの基調講演。「気」と「からだ」をめぐる内容で、医学の枠を越え智と経験の厚みを感じさせるものでした。続く城石先生のセッションではヤットン節のリズムが軽快でした。
午後は芙二先生のセッション、とても気持がよかっただけに後半駆け足で物足りない。カストロ先生はいきなりおいしそうな果物を持ってきて、何するのかと
思ったら自作の曲でみんなで「食べ物を探す踊り」、型破りです。一番見たかったドラミングで相手の動きを変えていくところは時間切れでガッカリ。最後は梅
田先生の自己調整法のテープでの実演と佐伯さんのアメリカンダンス。フォークダンスみたい。なかなかに楽しかった。
皆さんありがとうございました。
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